暮らしを支える機械抄き和紙
「和紙」という言葉の誕生
明治時代以降、機械で大量生産される「洋紙」が流入したことで、それまでの伝統的な手漉き紙を区別するために「和紙」という
言葉が生まれました。つまり「和紙」という名称そのものが、近代化の波の中で誕生したのです。
現在、和紙は大きく分けて「手漉き和紙」と「機械抄き和紙」の2種類に分類されます。
機械抄き和紙の歴史と発展
機械抄き和紙とは、伝統的な「手漉き」の技法を機械によって再現し、大量生産を可能にしたものです。その歴史は明治時代の
「文明開化」とともに始まりました。1,000年以上続く手漉き和紙の伝統に、西洋から導入された機械技術と製法が融合することで
発展を遂げました。現代の私たちが日常生活で目にする和紙の多くは、この機械抄き和紙です。
機械抄き和紙の主な特徴
高い生産性とコストパフォーマンス
手漉きに比べて圧倒的な速度で大量生産が可能なため、価格が安く、供給も安定しています。
品質の均一性
厚みや質感が一定しているため、印刷機への通紙や加工がしやすく、工業製品として扱いやすいのが大きなメリットです。
多様な原料の活用
楮(こうぞ)・三椏(みつまた)・雁皮(がんぴ)といった伝統的な原料に加え、木材パルプや化学繊維を配合することで、
強度向上や特殊な機能の付加を実現しています。
技術の進化と素材の多様化
戦前・戦後を通じて、機械抄き和紙は飛躍的な進化を遂げました。
化学繊維の登場
昭和30年代以降、レーヨンやビニロンなどの化学繊維を混紡する技術が発達。これにより、手漉きでは困難だった「水に強い」
「破れにくい」といった特性を持つ和紙が誕生しました。
用途の拡大
障子紙にとどまらず、掃除機のフィルター、あぶらとり紙など、工業・衛生用品へと活用の幅が広がりました。
デジタル対応
現代のライフスタイルに合わせ、インクジェットプリンターで美しく印刷できる和紙の開発も進んでいます。
文化財修復における新たな役割
かつて文化財修復には「手漉き」が絶対条件とされてきましたが、近年の著しい技術向上により、現在では特定の用途において
機械抄き和紙は欠かせない存在となっています。
保護・養生
本格的な修復作業に入る前の応急処置や、輸送時の保護材として使用されます。
大規模作品への対応:
襖絵や屏風など、建築に付随する大型作品の修復において、均一で長尺な機械抄き和紙が多用されます。
大量資料の保存:
虫食いが著しい古文書や、図書館に保管されている100年前の新聞・雑誌、行政文書の補強など、膨大な資料の保存・再生を
支えています。
かつて手漉き和紙は、様々に加工され生活のあらゆる場面を支えていました。現代では機械抄き和紙がその役割を引き継ぎ、
和紙特有の「質感」を活かしながら、実用性を重視する現代社会の新たな分野で進化を続けています。
